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5期生 慎ディアさん

 坂上ゼミ5期生の慎ディアさんにお話を伺いました。2021年6月21日に、Google Meetを使用してインタビューを行いました。ご協力ありがとうございました。

大学時代について

◆早稲田大学文化構想学部に進学を決めた経緯を教えてください。
 私は韓国で生まれ、父が早稲田大学で博士号を取得する六年間は家族で日本に暮らし、その後韓国に戻ってからは高校卒業まで韓国で生活をしていました。しかし、大学進学を考えた際に第二の故郷でもある日本に行き父と同じ大学へ行きたいとう思いから早稲田大学への進学を決めました。新しいことに挑戦したいということで文化構想学部に入り、大学の授業がこんなにも面白いものかと感心した覚えがあります。演習授業ではプレゼン発表する力が身に付きましたし、ゼミの皆とは意気投合して課題や活動に挑んだ記憶があります。色んなサークルに入り、たくさんの人に会いたかったので、書道、お笑い、スキューバダイビングなどでサークル活動をしました。とくにお笑いサークル「お笑い工房LUDO」は、韓国にいる時に、日本語を忘れないため日本のバラエティ番組を見てお笑いが好きだったことから入り、そこでは今でも連絡を取り合う友人ができ大切な思い出が詰まっています。

◆坂上ゼミを選んだ理由を教えてください。
 学部入学の際から大学院への進学を考えていたので、ゼミ選びはとても慎重に行いました。今後の研究テーマはもちろんゼミの先生の研究室にそのまま大学院までお世話になることもよく聞くからです。当初美術の専門的な知識はそこまでなかったのですが、幼いころより美術館へ行き、美術の本を読むことが好きだったのでこのゼミに惹かれました。また、毎年韓国合宿を行なっていると聞き自分の留学生としての能力を十分に活かせることができる場所だとも思いました。ゼミは合宿のための準備、その後の発表はもちろん見学会(主に美術館)も行いかなり活動的で勉強になる2年間だったと思います。
私の代(5期(2021年現在現役は12期))からアートマップ制作のために始まった、現在も毎年行なっている丸の内のフィールドワークの授業も貴重な体験の一つです。ゼミには私のほかにも留学生が何人おり、皆「奈良に行ったことがない」と言う話題になると、坂上先生が「では、皆で行きましょう」とおっしゃってくださり、韓国合宿に加えもう1つ国内合宿(奈良、金沢)を行うことになりました。合宿は個々人の経験や勉強だけでなく、チームワークの大切さを学び、その力は社会人になった今でも活かせるものになったと確信します。

 

◆ゼミの卒業論文ではどのようなことを研究しましたか?
 19世紀のフランスの印象派画家であるカミーユ・ピサロの晩年の都市風景画について研究しました。修士では彼の版画の作品について研究しました。博士に進学してからは日本で自分が研究する意義を考え、日本と韓国の美術の比較をする研究を始めました。

仕事について

 

◆今のオークション会社に就職した経緯を教えてください。
 今は、日本の美術品オークション会社で仕事をしています。研究を続けるか、就職するかという悩みは博士まで続きましたが、自分が憧れていた人生よりも自分が本当に楽しいと思うことが何かを考えるようになり、人とのコミュニケーションが何よりも好きであることに気づき就職を決意しました。本気で悩み選んだ道でもあり、今はこの会社に就職して本当によかったと思っています。院では自分が研究する狭い美術の世界をとことん掘り下げていくのに対して、今の会社は近代の作家はもちろん現代の新しい作家まで視野を広げるので常に動く美術市場を目の当たりにできる面白さがあります。

 

◆具体的なお仕事の内容を教えてください。
 美術品のみを扱うオークション会社はその数が限られているのもあり、そこで働くのは国語能力が高いか美術の知識を持っている人が多いです。会社の主な仕事は、もちろん、オークションを企画することです。オークション前は出品される美術品の価値を査定し、実際に美術品を検品した後、事実確認とともにその作品の情報を集めます。私が所属している編集チームでは作品の検品と情報収集、そしてその情報のHPや図録掲載を行っております。ここで検品というのは、絵画であれば、その作品の技法やサインなどの記述確認しをして、最終的には額から取り外して作品のシミやヤケなどの状態確認を行い、それらをすべて報告書にまとめる作業です。この検品作業は社員全員が行い、編集チームはこれらの報告書の内容の事実確認・校閲をして、形式に合わせた情報をHPや図録、外部の美術サイトで公開します。公開された情報をもとにオークションへの参加者が集まる頃にはオークションが開催されます。一連の作業は美術に対する知識、国内外のお客様へ対応するための語学力、そして図録制作や情報公開のための編集ソフトを扱う技術が必要です。最近はHPのより速い更新のためにCSSのコーディングの勉強を初めています。このように毎日が新しいことへの挑戦と学習で2年が過ぎた今でも大変ではありますが、その分飽きることなくワクワクする日々です。
 
◆オークション会社ならではのワクワクすることはありますか。
 これまで研究する目線からの美術、そしてアルバイトとしてほんの少しですが美術館や博物館の目線からの美術を経験しました。なかでも個人的にはオークション会社が、最も近くで美術品を扱う業者であると思います。美術市場で「今」最も旬なものたちに常に触れ、また世界中の美術愛好家からの今最も興味のある作品に対する意見を聞けるのは他では味わえない魅力ではないでしょうか。また、扱う美術品への制約があまりないので、自分の知らない作家の作品に初めて出会うこともしばしばあり、自分の好みに合う作風の人を発見できる機会にもなります。実際にオークション会社に勤めながら美術品を集める人も少なくなく、私もその一人です。

 

◆ゼミで学んだことで社会人になって活かされていることはありますか。
 大学や大学院での経験が今の仕事に役立っていると感じることはたくさんあります。大学院での校正・校閲作業は今の編集の仕事でも行っていますし、その時に身についた文章能力も活用しています。坂上ゼミの大学院進学後は、會津八一記念博物館や他の美術館でアルバイトをしたのですが、そこでの調査作業はもちろんエクセル・イラレ作業も仕事に引き継がれています。美術館でのアルバイトで行った、作品に記載されている文字の解読は、この仕事でフランス人の筆記体を読み解かなればならないことも多いのでとても大切な経験でした。大学の授業ですと、学芸員資格の授業で学んだ美術品の扱い方も役立っています。個人の研究内容からは、版画を研究していたので、エディションに関する専門用語が分かり、技法の判別ができることは仕事の効率的にも良かったと思います。その他にも、ゼミの韓国合宿で大変だった翻訳・通訳は、現在韓国のお客様を担当することが多いので、とても役立っています。これらの経験で得た能力は、当時は自分に何の得になるかわからず、今何をしているんだろうと不安ばかりでしたが、驚くほど今の仕事に活かされているので、人生分からないものだなと思います。
 
◆将来の夢、今後のヴィジョンについて教えてください。
 大学・大学院の友達や同期と一緒に、仕事上何かしら関わってつながることをしてみたいです。サークル友達にはPRやブランドマーケティング、芸人の仕事をしている人、大学院の友達には展示会場をつくったり美術品を運んだりするアート関係の仕事をしている人が多いです。一見関わりのない業種の人たちがつながることのできるコミュニティをつくってみたいです。
 
在学生へ向けてメッセージ

 

◆在学生へ向けたメッセージをお願いします。
 体力が許す限りたくさん勉強して遊んでほしいですし、今はコロナで難しいと思いますが、たくさん旅行してほしいです。私は大学在学時にはとにかくエネルギーを発散させ、やりたいこと遊びたいこと全部をやり尽くしたと思います。あらゆるイベントに参加し、色んな人と会い、旅行だと海外はもちろん国内も40県ほどまわりました。その分成績をとるために徹夜の連続でしたが、一度も後悔したことはありません。趣味は人それぞれなので必ず旅行という訳ではないのですが、自分がやりたいことだけでなく、色んな経験ができる場所へ行くことにより、本当に自分が好きなものが何かを分かる時期になればと思います。個人的に良かったのは、こういった大学時代のおかげで遊ぶことに未練があまりなく、社会人になってからのストレスや欲も少なくなり、仕事に集中できているところですかね。「また今度」、「また今度」と自分を制限して閉じこもるのは物事に集中する分には良いと思いますが、自分がまだ何をやりたいのか分からなければ、その分たくさんのものを見聞きして、アクティブに動くことをお勧めします。コロナが終わったらぜひ同窓会でお会いしましょう! 

インタビュー後の感想

 

インタビュー中は、慎さんがたいへん明るく気さくに受け答えしていただき、お話を広げていただいたおかげで、終始楽しく進めることができました。お話がどれも普段知ることのない内容ばかりで興味深く、話し込んでいるとあっという間に約2時間も経っていました。大学院のことからオークション会社のお仕事のことまで知ることができ、非常に有意義な時間でした。

[聞き手:冨士原、田中、内田] 
 

 

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