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3期生 岩谷ちなつさん

坂上ゼミ3期生の岩谷ちなつさんにお話を伺いました。2020年7月に、メールでインタビューを行いました。ご協力ありがとうございました!

大学時代について

◆大学時代のことについて教えてください

元々国際教養学部に入学し、1年間過ごしました。また1年生の春に演劇研究会という演劇サークルに入会し、新入生の時はとにかく忙しい日々だったと記憶しています。2年に進級する前に文化構想学部複合文化論系への編入を考えました。

編入後は、演劇や西洋美術、舞踊史など、アートの分野の講義を多く選択しました。演劇サークルも並行して続けていて、学内だけではなく実際にフリーランスで働いているスタッフとともに学外へ活動の場を広げていきました。

正直、「真面目な学生」ではなかったと思います。講義を受けている時間以外はほとんど演劇のことばかりしていました。あるとき某劇団のベルリン公演にスタッフとして同行させてもらったこともあります。休演日はベルリンの美術館巡りをして、その時から日本でも海外でも、休みの日は美術館に足を向けることが多くなったように思います。

坂上ゼミに入るまでは、美術館に行くことは1つの文化活動のような堅苦しいイメージを持っていて退屈だと思い込んでいましたが、学内で美術史を学んでいくうちに、美術鑑賞は当時の人々の生活をのぞいたり、「アート」を通して今の私たちの生活を考え直すきっかけをもらったりするものであることに気付きました。また演劇のフィールドで常にアウトプットを続けてきた自分にとって美術鑑賞は非常に豊かなインプットの時間になりました。ですので、私の大学時代を端的に表現するとしたら、舞台(Black Box)と美術館(White Cube)といえるかもしれません。

◆坂上ゼミを選んだ理由、当時のゼミの様子や、研究テーマを教えてください

坂上ゼミを選んだのも、上記のこと思えば至極当然な結果だったと思います。演劇などに特化したゼミにしなかったのは、すでに演劇に関わっていた私にとって別の世界の刺激を演劇に還元したかったという思いからです。実際坂上ゼミには大きな枠組みとして「アート」という共通項はあっても、学生たちそれぞれが興味を持っている分野は本当にバラバラで、建築だったり、インテリアだったり、西洋美術の中でも異なる時代の作家たちだったため、本当にたくさんの刺激をもらいました。

坂上ゼミといえば、韓国合宿。本当に楽しかった!ソウル市内の美術館を巡ったり、現地の大学生と一緒に学内を回ったり、ただの観光ではなくその国の日常生活の中に入って過ごした日々はかけがえのない経験となりました。普段のゼミの授業もとても記憶に残っています。毎回決まったテーマについて、それぞれの興味ある分野で噛み砕く発表形式の授業は非常に勉強になりました。卒論についても学生によりテーマは違いましたが、違うからこそ気づけるところを指摘してもらえたのも嬉しかったです。

卒論のテーマにはバウハウスのオスカーシュレンマーのバレエ作品を選びました。バウハウスの他の作家を選んだ同期のゼミ生もいて、2人でバウハウス研究をしたのもよく覚えています。

◆進路を決めた理由(就活で注意したこと、意識したことなど)はありますか

私の現在の職業は、フリーランスの舞台スタッフです。進路を決めた理由は、「3年後になりたい自分」を想像した時、何より舞台を仕事にしたかったからです。大学で演劇を始め、寝食を忘れるほど没頭しました。「3年後」を基準にするのは、自分が想像できる範囲内の未来だからです。あまりにも遠い未来だと、手に余るほどのタスクを抱えてしまうし、1年後では行動に大胆さを欠いてしまいます。

私の場合、学生時代、私の好きな作品や劇団やダンスカンパニーに関わっている舞台監督の現場にお手伝いに行かせてもらったことがあり、実際にその方と働いて「この人みたいになりたい!」と思っていました。それで大学4年の春、勇気を出して相談に行き、「弟子入り」を申し込んだところ承諾してもらえたので、これにて私の就職活動は終了しました。

4年間はその舞台監督と一緒に公演に携わったり、1人で舞台監督をしたりしましたが、5年目の春からはKAAT神奈川芸術劇場の舞台機構で働いています。

仕事について

◆やりがい、楽しいことを教えてください

台本に書いてある物語が、俳優さんや舞台美術や照明や音響が入ってどんどん立体的になっていくのは本当に楽しいです。開演前の客電が消えて、劇場が暗転していく時に劇場にいる全ての人がこれから始まる舞台に集中して一瞬音が全てなくなる瞬間も、終幕のカーテンコールの拍手を袖中で聞くのも、客席で聞くのとも舞台上で聞くのともまた少し違い、この仕事をしていて心が震える時がたくさんあります。

◆大変なことはありますか

とにかく体力勝負です。舞台設営は力仕事も多いです。またフリーランス特有かもしれませんが、自分が休み!と決めない限りはお休みの日はありません。繁忙期は3ヶ月間休みがない時もありますがこれは自分のマネジメント次第です。

◆仕事をする上で気を付けていることはありますか

1つの公演は平均して1〜2ヶ月です。フリーランスで働いているので、全く同じ人たちと毎回働くということはほとんどなく、ひと月の間に出演者とスタッフ合わせて約40人と初めましての挨拶をします。短期間で良い関係を築くことがとても大事な仕事の1つなので、現場に入るまでに全員の名前を覚えるようにしています。初めて会話するときに名前を呼ぶだけで距離がぐっと縮まり、そのあとの作業がとても円滑に進みます。

◆学生から社会人になって一番変わったと感じたことを教えてください

一番変わったことは、おそらく「好きなことが仕事になった」ことだと思います。学生時代は舞台スタッフという自分が好きなことを学生の自分がしなければならないこと以外の時間で存分に楽しんでいましたが、舞台スタッフが仕事になった今、ほとんどの時間を「好きなこと=仕事」に費やしています。

◆ゼミで学んだことで社会人になって活かされていることはありますか

ゼミでのプレゼンを通して、自分の興味があるものを知らない人に伝える、知らなかったことを学びそしてそれと自分の興味分野との共通点を見つける、この2つを様々な場面で経験することができました。この2点は実生活でもとても役立っています。

◆卒業後、フリーランスという道に進まれたのはなぜですか。フリーランスとして働くことにおいての難しさはどのようなことでしょうか

舞台業界は圧倒的にフリーランスが多いです。自分の興味があるものに徹底的に挑戦したいという思いがあったことも、フリーランスになる後押しになったと思います。

フリーランスとして働く難しさは、同期がいないことかもしれません。自分から開いて自ら行動する力がないと孤独な働き方になると思います。

それともう1つは、「フリーは一度失敗したら終わり」というところがあります。自分の仕事が失敗した時は、次回公演でスタッフとして契約してもらえることはまずないでしょう。ですので、ひとつひとつの緊張感はフリーランスの方が高いのかもしれません。

◆将来の夢、今後のヴィジョンを教えてください

20年後も舞台の裏方をしていたいですね。シンプルに。仕事というのはインプットよりも断然アウトプットが多い作業だと思うので、20年後も同じ仕事をしているためには、それ以上のインプットをし続けなければいけないと思っています。ですので、海外の劇場で働いたり、今いる場所を飛び出して自分の好奇心に応えていきたいと思っています。

在学生へ向けてメッセージ

◆在学生へ向けたメッセージをお願いします

在学生の皆さんは、一寸先は闇のような情勢に本当に日々不安な思いで過ごしていることと思います。ですが、今はただ止まってしまっているのではなく、バネが飛び跳ねる前に小さく縮まるように、力を蓄える時なのかもしれません。とにかくやってみたいことを紙に書き出して、できることから始めてみてください。

また少し堅実なことを話すと、早稲田大学の文学学術院の語学授業はかなり充実していて語学習得には最適な場所だと思います。ですので、学生時代、ぜひ第二外国語に力を入れてください。

あとは、とにかく気になったらやってみる!やってみることは、少し怖いかもしれないけれど、ただ足を一歩踏み出すだけですから、臆することなくやってみてください。今回このようにインタビューの連絡をしてみたのも、一歩めだったと思います。連絡が来て嬉しかったですよ。このくらいの気軽さで、どんどん歩を進めてください。

最後に、今いろいろな海外の劇場や日本の劇場でもオンライン配信等行っています。是非見てみてください。KAATもオンラインバックステージ映像をYouTubeにあげていますので、それもよかったら見てみてくださいね。

長くなってしまいました。またゼミに遊びにいきたいです。

[聞き手:大井・冨士原 文責:大井]

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