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1期生 川口大輝さん

坂上ゼミ1期生の川口大輝さんにお話を伺いました。2020年6月15日に、zoomを使用し、オンライン上でインタビューを行いました。ご協力ありがとうございました!

大学時代について

◆大学時代のことについて教えてください

サークルは写真サークルに入っていました。もともと写真に興味があったわけではありませんが、基本的に文学や小説といったロジカルなものが好きだったので、今までの自分では選択しないような、ビジュアルを扱う分野に触れてみようと思って入部しました。

大学時代は、何かにすごく打ち込んだような記憶はないのですが、本を読んだり友達と遊んだり、時間を贅沢に使って好きに過ごしていました。もっと意識を高く過ごせたのかなと思わないわけではありませんが、これもかけがえのない豊かな日々だったと思います。

◆坂上ゼミを選んだ理由を教えてください

写真サークルに入ったのと同様に、自分がいつもなら選ばないようなところを選びました。美術に詳しかったわけではありませんが、色々な人に会いたくて早稲田大学に通っていたので、自分が入らなそうなところに入ってみました。

また、僕が大学二年生だった頃に、スペイン写実主義風の絵を描く画家だった、地元の友人のお父さんが亡くなられたことも一つのきっかけです。その頃回顧展や画集の出版などがあり、友人の楽しいお父さんの、人生そのものと言える魂がこもった精緻な写実画に触れました。自分にとって縁遠かった美術を近くに感じたという経験は、当時ちょうどゼミを選択する時期だった自分にとって、大きい意味があったと思います。

◆就職先(進路)を決めた理由(就職活動で注意したこと、意識したこと)はありますか

正直、就活は本気で取り組めてはいませんでした。東日本大震災が就活の時期と重なり、それによって働くことそのものの価値観が揺れた部分はありました。人が亡くなり、企業は破綻し、ほとんどの採用活動が停止。一緒に就活していた大学時代の友人の中には、復興のために被災地である地元の石巻市に帰る選択をした人もいました。今のコロナ禍の状況と重なりますが、働けるだけありがたい、何事も命あってのものだなと思ったのを覚えています。

原発問題など情勢も混乱しており、東京に残るのが正しいのかもわからず、地元での就職を考えたり、仕方がないことではありますが、長い間決断を先延ばしにしてしまいました。

最終的な会社の選択基準は企業のネームバリューではなく、会社が成長過程かどうかと、そこにいて自分が成長できるかどうかを軸にしていました。結局ITベンチャーに営業として入って働き、その後2年半で転職してしまいましたが、しかしそこでの経験や出会いが社会人生活において一番価値があったものだと思っています。

仕事について

◆具体的な仕事の内容について教えてください

新卒としてITベンチャーで営業職を2年半経験したのち、将来設計としてプロフェッショナルな職歴を重ねたいと思い、特許法律事務所に転職しました。外国特許事務として1年半働き、職務内容的には充実もしていましたが、職場環境において諸々の不和があり、その後再度転職することとなりました。

現在はメディアクリッピングサービスの会社で働いています。企業から依頼を受けた内容のメディア露出(TV/web/雑誌/新聞)を調査し、データを収集する会社です。端的に言えば、全メディアから記事をかき集めてデータ分析をする、といった仕事です。調査部の雑誌部門に所属しているので、ひたすらに女性ファッション誌を隅から隅まで読んで一日が終わる日もあります。

◆やりがいを感じることや楽しいこと、大変なことなどはありますか

上記の通りかなりニッチな分野であり、紙メディアの衰退なども含め今後の展開が読めない産業ではありますが、競合自体も少なく、会社として替えが効かないサービスを提供出来ているという喜びはあります。また今働いている会社は、元々は大手新聞社の下部組織として発足した、戦後から存在する歴史あるところで、これまでずっと受け継がれてきたこの灯火を消せないという思いもあります。ただ、その歴史や古い伝統が柔軟さや合理的な発想を阻んでしまっている内情もあるため、会社の古い体質を変え、活路を見つけ、事業を存続させていくことが将来的な自分の役目だと思っています。

◆仕事をする上で気をつけていることなどはありますか

月並みですが、目の前の諸問題に目を背けず、真摯に取り組むしかないと思います。自分のメインの業務から、小さな事務作業までの全てにおいて、雑にこなしたことは雑な結果で帰ってくるものだと感じます。大きな枠組みの中にいると、自分ひとりが適当にやっても別にバレない、と思えてくるのですが、そこで矜持をもって腐らないようにすること、また近視眼的な仕事をしないようにするということが大事だと思います。

あとはどんな時でも相手の視点で考えることと、にこやかであることです。話を聞かない人間の話は聞いてもらえませんし、また職場で感情が顔に出る人はまだ半人前です。覚えておきましょう!

◆学生から社会人になって1番変わったと感じることはなんですか

営業マンとして沢山の方々と出会い、転職を通して色々な職場を経験したことで、価値観の多様さに触れられたことが一番の成長です。世の中には色々な人がいて、色々な文化があります。その人たちを変えたいのであれば、その人たちの中に入っていって、分かり合った上でないと変わってもらえない。様々な人を知り、それぞれの立場を見てきたことで、安易に人の考えを否定しなくなりました。

◆ゼミで学んだことで社会人になって活かされたこと

最初のゼミで美術展に行った後の会食で、1番奥に座ったら先生に怒られて。強烈に印象に残っているのはそれです(笑)。あとは美術館に行くのが自分にとって「普通」のことになったので、それも良かった点です。

本格的に西洋美術研究に触れられたことももちろんですが、1期生としてゼミ長を務めたことや、坂上先生とのコミュニケーションの中で学んだ事自体が一番大切な経験だったと思います。先生の学生であることは本当に誇りに思っています。

大学生活は、就活においてはほとんど役に立ちませんでしたが、「400万円を超える学費をかけてどの学問を納めますか」といったときに、文化構想学部を選んで、そしてこのゼミに入ったことは、自分の中でとても粋な選択だったなと思っています。

◆将来の夢、今後のヴィジョンを教えてください

ふらふらと生きているので具体的にはまったくないです(笑)。コロナの影響は大きくて、10年前の震災の時と同じで、いつまで続くかもわからないし、ありとあらゆる産業が先の見えない状況で、どうなることかなと思っています。東京にいることに拘らなくてもいいし、とはいえビジョンは全く見えないけど、楽しいだけじゃまずいよな、とも思っています。ライフワークバランスを優先した環境選択を行ってきましたが、将来を考えるともう少し経済的な支えも必要だな、などとシビアなことを考えています。

在学生へ向けてメッセージ

◆学生時代にしておいた方が良いことがあれば教えてください

ちょっとでもやりたいことなら、何でも恥ずかしがらずにやったほうがいいとは思います。でも、やらなかった自分を後悔しなくていいです。たくさんの分岐の中で、どんな感情でどう選択してどう思ったのか、本当はどうありたかったのか。その経験と自己分析を少しずつ溜めておけば、人生の要所でいい感じにガッツが出るのではないでしょうか。基本的には何でも好きにしていいと思います。殻に閉じこもって自尊心を守るのもアリ、馬鹿にされながら行動するのもアリです。可能性に満ちた未来ある大学生、めっちゃ羨ましいです。ぜひ変わってください。

[聞き手:大牟禮・神 文責:神]

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